日頃、絵画など興味のない人間に限って、この時期「芸術の秋」などとほざいて絵画集を書棚から取り出すものである。かくいう当方も、その例に洩れない。引っ張り出したのがこれである。
わずか30頁ほどの薄い刊行物。1冊 500円。ピカソやゴッホ、ルノアール、シャガール、レオナルド・ダ・ヴィンチなど名だたる作家の代表作と、その解説が載っている。開いた1冊にこんなのがあった。
表題に、「キスする恋人たち」とある。左頁上から「クリムト 接吻」同じく「クリムト 成就:抱擁」。右頁上から「シーレ 枢機卿と尼僧」「ムンク 接吻」「ペーター・ペーレンス 接吻」そして、「マグリット 恋人たち」。
「マグリット 恋人たち」は、互いに頭部にシーツを巻き付けたままでのキスシーンである。作家 マグリットはなにを表わそうとしているのだろう。
当方が好きなのは、「クリムト 接吻」である。
解説にはこうある。
「咲き乱れる花と、降りしきる金の雨。恋人たちは金色に輝き、キスを受ける女性の顔は恍惚としている」
「幸せの絶頂にいるように見えるふたりを崖の上に配置して、ただ幸せなだけではない未来を暗示しているのが、この作品をいっそう魅力的にしている」
何度見ても、この絵は見飽きない。
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